一般的に、物理療法機器の多くは急性期に使用できません。
急性期とは、怪我をしてすぐの炎症が起きている状態で、機器により炎症をさらに悪化させてしまう可能性があるためです。
一方、超音波を用いた治療であれば、急性期であっても、炎症にかかわらず怪我をした部位を積極的に治療することができます。
超音波は、炎症した組織の治癒力を高める効果があります。
超音波から発せられる超振動が、細胞間に流れる組織液の循環を活性化し、浮腫の軽減、周辺組織の治癒を促す効果があるためです。
特に注目されているのが、骨折をした後の超音波による治療法です。
骨折の治療にはギプス装具などで一定期間固定が必要で、装具を外した後にはリハビリなどの運動療法や物理療法を行います。
この場合、早い段階で超音波治療を取り入れると、骨折部位の骨癒合（こつゆごう）が促進され、骨の治癒スピードが格段に早まります。
超音波で微弱な刺激と振動を与えると、骨細胞や骨周りの組織の治癒力を高めることができ、さらに短期間で修復させることが可能です。

当院で使用する超音波の周波数は、1MHz（メガヘルツ）と3MHz（メガヘルツ）の主に2種類です。
温熱効果に用いられる代表的なものとして、ホットパック、パラフィン浴、赤外線などがありますが、皮膚の下数㎜～1cm程度までの温熱効果しかありません。しかし、超音波1MHzの周波数を用いることで、より深部の組織まで温熱効果を与えることができ、さらに効果的な治療を行えます。
特に、肩関節などにみられる関節包の癒着による関節拘縮の場合、関節包の内部まで超音波が届き温熱効果と振動による施術で、癒着した関節包の伸張性が改善され効果的な治療が可能です。
関節包が癒着してしまうと、外部からの刺激は表面上にしか届きません。そのため、癒着した内部に刺激を与えることは難しく、治療法にも影響します。
しかし、超音波を用いた施術であれば関節包の深部まで効果を届けられるため、症状の改善につながります。

超音波の施術には「連続モード」と「間欠モード（パルス）」という2種類のモードがあり、この2つを切り替える事で温熱効果と非温熱効果を使い分けることができます。
連続モードは比較的炎症が治まってから使用されることが多く、炎症が強い急性期に使われることは基本的にありません。
一方、間欠モードは連続モードとは異なり、急性期など炎症の強い時期にも選択されるモードです。
さらに、非温熱効果にするためには、間欠モードで休止と照射を交互に行いながら、機械的な振動を与えていきます。
非温熱効果は、骨癒合の促進効果が注目されており、ほかにも皮膚組織の修復や炎症組織の改善など、細胞レベルまでしっかりとマッサージを行えます。